特集

2018年 第15回ショップスタッフディスプレイコンテスト(平成30年秋~30冬)

2018年 総評[審査委員長 空間プロデューサー 椎野伝一氏]
ディスプレイの目的・役割は店舗の売上・利益を上げることにあります。それにはディスプレイをマーチャンダイジング(以下MD)に連動させるものにしなければなりません。 ディスプレイの売上げを上げる為に果たす役割は大きく二つに分けられます。 一つはマーケットポジショニング。競合に勝つ為には、自店のポジションを明確にすることが重要になります。価格競争や、売れ筋の確保といった戦術は必要条件ではあれ、十分条件ではないのです。なぜならそれはどの企業、店も進む道であり、程度の差はあっても決定的な差別化要因にはなり得ないからです。明確に絞り込んだターゲットに対し、自店が提案するイメージを植え付け、さらに自店の商品がお客さまに最良のものであると思わせる工夫が「ポジショニング」です。 もう一つは、品揃えの精度アップということが考えられます。売上げとは顧客満足の結果であるといえます。お客さまは自分の欲しい物が「欲しい時に」「欲しい価格」で提供された時、満足し顧客になります。お客さまのニーズを知り、他よりも半歩でも先に提供することが必要です。しかしニーズを知るといっても、単に「色々あります、お好きなものをどうぞ」というのでは全く意味がありません。予め立てられたMD計画をお客さまに発信し、お客さまの反応をフィードバックすることで次の品揃えに活かして行くのです。 すなわち、品揃え計画が「PLAN」、商品の調達が「DO」だとすれば、店舗での販売は「CHECK」として位置づけるべきであり、品揃え計画に基づく意図(何を、いつ、誰に、何故、どのように)を分かりやすくプレゼンテーションすることが、お客さまの反応を導き出し、その反応への対応が次の品揃えに反映されることで、より精度の高い品揃えが実現できるのです。 ディスプレイとは自店の思いをお客さまに向けて発信するための、必要不可欠なツールなのです。 自店の品揃えの特徴、ターゲット、流行や着こなしの情報などの自店のMDコンセプトをわかりやすく、ビジュアルに表現することであり、ただきれいに見せたり、飾ったりすることとは本質的に異なるものなのです。
2018年受賞作品

優秀賞① ドンク 多賀城店
コストをかけなくても、効果的なプレゼンテーションが可能だという手本のようなディスプレイ。商品パッケージを活かし、店内奥のコーナーをインパクトのあるものにしている。ポイントはアイテムに絞り大量陳列をすることでボリューム感を出すことと、あえてクリスマスカラーを使わなかったこと。淡いベージュをベースにアクセントカラーの赤が効いている。

優秀賞② ハミルトン ハミルトンエッセンスイオンモール太田店
テーマカラーであるグリーン以外の色を、ベージュと赤に絞ったことが、より訴求力のあるコーナー演出にしている。各ボディの色使いを統一したことで、それぞれのコーディネートの違いが際立ち、結果としてお客さまの目を引き付けることに成功した。ウインドウやステージのような派手さはないが、確実に売りにつながるプレゼンテーションだ。

優秀賞③メルボメンズウェアー テーラーフィールズLUCUA1100店
ボディに着せたフォーマルスタイルの仕上げに、アクセントとしてマフラーの色目を上手く活用している。ボウタイとマフラーのカラーを合わせたのも、訴求力をアップさせている。 スタイリングを見せるだけではなく、マフラーのカラーバリエーションとギフトボックスで、ギフトも合わせて訴求するなど、緻密な計画性がうかがわれる。

テーマ賞 イワキ 渋谷店
赤と黒に金色のアクセント、日本の雅がストレートに伝わってくる力強い演出。長方形の紙に水引きだけのとてもシンプルな構成が、かえって遠目からのインパクトを持たせると同時に、商品自体を引き立てています。テーブル上の商品を載せた4つのステージも、赤と白で統一してよりお客さまの目を引くものになっている。

ベストカラー賞 銀座マギー 横浜ポルタ店
全体をモノトーンに絞り、ビビッドなピンクをアクセントに使ったカラーコントロールが素晴らしい。大人の女性らしいエレガントで華やかなマギーらしい装いが的確に表現されている。壁に飾ったフレームもカタログの写真を使い、お客さまに今期の商品をラインナップと着こなしのバリエーションを見て頂く良いアイデアだ。

ストーリー賞 東京鳩居堂 銀座本店
和をテーマにした商材でクリスマスを訴求するのは大変難しいこと。今回は干支であるイノシシを主役に、雪と星空で聖夜を演出。特にバックの赤白の配色が和と洋の雰囲気を感じさせています。この構成のまま金色の背景に初日の出を配し、岩山に雪を積もらせて星を凧にすることで、一気に正月イメージに変化させるストーリーも秀逸。

バランス賞 ホットマン 香林坊大和店
クリスマスイメージの刺繍を使ったタオルを中心に、左右の商品の配置と展開量が絶妙なバランスを作っている。左右対称に見えて前後にずらしたり、畳み方を違えたりするテクニックが単調になりがちなタオルの訴求に変化を与え、中央に柄物を配したことで、左右の商品のストライプをより際立たせている。

シチュエーション賞 メーカーズシャツ鎌倉 マディソン・アベニュー(ニューヨーク)店
背景のグラフィックの山小屋に前方の商品演出が上手く溶け込んで、ウインターリゾートの雰囲気が良く出ているウインドウディスプレイ。切り株に掛けたタータンの布とガラス面のタイポグラフィがクラシックなイメージをより強く感じさせ、ブランドのコンセプトがしっかり伝わるプレゼンテーションになっている。

ファンタジー賞 ワッツ東日本販売 ワッツ西武本川越ぺぺ店
ややもすると価格でしか訴求できないと思われている百円均一のお店ですが、やり方次第でこんなに素敵なカワイイコーナーが出来上がります。最大の勝因はカラーコントロール。白と赤やピンクの商品だけを集約したことで、テーブル全体のパワーアップにつながった。様々なアイテムが揃う雑貨店での演出の決め手はやはり色の絞り込み。

入賞 かねまつ 御殿場プレミアムアウトレット店
オーナメントとして使った赤いパンプスが、クリスマスツリーのグリーンに良く映えている。テーブル上のバッグとブーツの白とツリーのカラーのコントラストが、よりクリスマスのワクワク感を醸し出している。

入賞 京王百貨店 聖蹟桜ヶ丘店食品売場エノテカ
ハロウィンカラーである黒とオレンジに合わせて、スパークリングワインをセレクトしたことで、とてもインパクトのある演出に。大きな樽を使ったジャック・オー・ランタンも、遠目からのアイキャッチャーとして効果的だ。

入賞 スミノ ポートランド国分寺マルイ店
売場内の小さなコーナーなのに、品揃えの全体像を上手く訴求できている。特にタータンチェックの色使いを赤系とグリーン系に統一したことで、コーナーとしてのまとまりが感じられ、白のニットがより際立つ効果を生んでいる。

入賞 専門学校ファッションカレッジ桜丘 購買部
学生らしい自由な発想を感じさせる楽しいウインドウディスプレイ。宙に浮いて開いたギフトボックスやジャンプしているようなサンタのポーズなど、動きのる空間構成がクリスマスらしいワクワク感を醸成させる。

入賞 田中興産 armoire capriceマルイファミリー溝口店
色の使い方がとても上手い。左のアウターの色を右ではインナーに使い、紙袋の色も合わせるなど、キチンと計算ができている。一方で手に持ったバッグが宙に舞うような演出もあり、楽しい雰囲気も感じられる優れたディスプレイ。

入賞 玉屋 Lyckaラフォーレ原宿店
様々なアイテムや色が揃うアクセラリー店にもかかわらず、黒のアイテムを集めてとてもインパクトのあるコーナーが出来た。商品の色を絞り込んだことで、演出物の赤とゴールドがより効果的なものになっている。

入賞 虎屋 アトレ吉祥寺売店
干支のパッケージに合わせてイノシシ柄の赤の風呂敷を背景に活用した、華やか且つ如何にも正月らしい演出。あくまでもシンプルな陳列配置が、老舗の商品の確かなイメージを伝えている。

入賞 並木 赤木高原SA上り線大和屋カフェ
冷え込んだ星空下で飲む一杯のコーヒーの温かさを感じさせる、雰囲気のあるディスプレイ。バックの濃いブルーの星空と枯れ枝や落ち葉など、それぞれに完成度が高く、全体として上質な空気感のあるプレゼンテーション。

入賞 山野楽器 本店3F弦楽器サロン
背景の古い地図と装飾物の深い赤とゴールドが、バイオリンという楽器の持つクラシックで優雅な雰囲気を上手く表現している。このコーナーでは陳列商品をあえてバイオリン一台に絞ったことで、より上質感を出せている。